【コラム】調停の前に裁判を行うことが求められる場合

遺産分割調停と裁判の関係

 通常、遺産分割の交渉がうまくいかなければ、遺産分割の調停を申し立てます。そして、調停でも合意に至らないと審判が行われ、裁判所が遺産分割の方法を決めます(審判に対して即時抗告で高裁に判断を求めることは可能です)。

 しかし、遺産分割に関連して地方裁判所での民事訴訟が必要となる場合があります。それは、どのような場合でしょうか?

遺産確認の訴え

 遺産確認の訴えとは、特定の財産が遺産に属するかどうかの確認を裁判所に求める訴訟です。これは、訴訟の類型としては、確認訴訟に属します。確認訴訟とは権利義務関係を裁判所に確認してもらう訴訟であり、その必要性がある場合のみ認められます。遺産確認の訴えは、遺産分割の前提として遺産の範囲を明確にするためですので、必要性があり、確認訴訟として認められるわけです。

 遺産確認の訴えが必要なのは、特定の財産が遺産に含まれるかどうかが争われている場合です。例えば、ある不動産について相続人の一人が生前贈与を受けていて自分のものであると主張したり、逆に相続人の一人の名義になっている資産について名義だけの移転で実質は贈与はされていないから遺産に含まれるという主張がされるなど、ある不動産や動産が遺産に含まれるかどうかが争われる場合があります。このような場合は、先に遺産確認の訴えを起こして遺産の範囲を確定する必要があります。なぜなら、遺産分割の審判には遺産の範囲についての既判力がなく、仮にある資産を特定の相続人が相続する旨の審判が出ても、あとから民所訴訟で覆される可能性が残されているからです。それゆえ、先に民事訴訟をして遺産の範囲かどうかを明らかにしておかないと、紛争の最終的な解決ができないと考えられるのです。

 このような、遺産分割の前提となる権利義務関係のことを前提事実と言います。

 

遺言無効確認の訴え

 遺言があったけれどもそれが無効であるという理由で調停や審判による分割を求める場合は、まず訴訟で遺言の無効を確認する必要があります。(ただ、相続人全員及び遺言執行者が遺言の無効を認めている場合は、そのまま調停を行うこともできると考えられます)

 遺言無効確認訴訟は、文字通り、遺言の無効の確認を求める訴訟であり、地方裁判所で行います。遺言が無効であると認められると、遺言はないのと同じですから、遺産分割協議や調停、審判で遺産分割を行うこととなります。遺言の無効の理由としては、被相続人が認知症などで遺言能力がない状態で書かれた遺言書である、自筆証書遺言で形式を満たしていない、自筆証書遺言でそもそも本人が書いていない(偽造であったり、他の人が手を添えて書いていて本人が書いたとは言えない)などが考えられます。

 一方、請求棄却の場合は、遺言に従って分割を行うこととなります。

 

その他

 上記以外に遺産分割の前提事実に関する訴訟として、養子縁組無効の訴え、が考えられます。これは、相続人の範囲を確定するための訴えであり、地方裁判所の管轄となります。

 

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