遺産分割調停の進み方
1, 遺産分割調停とは?
遺産分割調停とはどういう調停でしょうか? これは、遺産の分割、すなわち遺産をどのように分けるかについて、家庭裁判所で話し合う手続きです。話し合いとはいえ、裁判所で行われるのが遺産分割協議との違いです。当事者間での遺産分割協議がうまくいかなかったり、そもそも協議に入れなかった場合等に、相続人の1名が(あるいは2名以上が連名で)家庭裁判所に申し立てることで始まる手続きです。
なお、家庭裁判所はどこでもよいわけではなく、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に管轄があるとされています。それゆえ、申し立てる人から見て相手方がどこに住んでいるかにより管轄は異なってきます。相手方が複数いるときはいずれの相手方の住所地の家庭裁判所を選んでもよいこととなります。例えば、相手方が2名いて、それぞれ名古屋と大阪に住んでいる場合は、名古屋、大阪、いずれの家庭裁判所に申し立ててもよいこととなります。それ以外に、当事者間の合意で管轄を認めることもできます。
2, 申立書を出した後に行われること
上記のように相続人の1名か2名以上の連名で遺産分割調停の申し立てがあると、家庭裁判所は期日を決めて他の相続人に書面で連絡し、出席を求めます。一方で、内部的には、裁判官1名と調停委員2名からなる調停委員会を組織します。通常、調停委員は男女1名ずつです。
そして、期日当日、調停員が順番に各相続人の話を聞いていく手続きに入ります。ただ、その前に相続人一同を集めて裁判官から手続きの流れについて説明がある場合もあります。
調停は、調停室に順番に呼ばれて、調停委員と話をして、調停委員がその内容を他の相続人に伝えるという形で行われます。この際、調停室には順番に入り、他の相続人はそれぞれ別の待合室で待機するように求められるため、他の相続人と顔を合わせることは基本的にありません。ただ、相続人が数名かそれ以上いる場合において意見のおおむね一致しているグループがある場合は、そのグループはまとめて調停室に呼ばれる、ということもあります。例えば、相続人が3名で、A,B,C,のうちA,Bは同じ意見という場合は、A,Bは一緒に調停室に呼ばれる、ということもあります。
調停では、まず、各相続人は、自分の希望(どの遺産を取得したいか、など)を述べ、また、寄与分、特別受益などの主張があれば、それらについても調停委員に伝えることができます。
調停は、各相続人が自分の考えを調停委員に伝えるという形で行われ、一堂に会して行うわけではないので、当事者だけで行う遺産分割協議とは進め方がかなり異なります。なお、裁判官は成立の時を除き調停の場に姿を見せないのが一般的です。ただ、調停委員は期日前に、あるいは期日中でも、随時裁判官と協議して進行を決めているので、当事者から姿は見えなくても裁判官が大きな役割を果たしているのは間違いないと思います。
3、遺産分割調停のメリット
まず、相手に意見を伝える際に調停委員を通すため、冷静に話し合えるというメリットがあります。また、裁判所で行われる手続きであるため、基本的に法律に則って解決を目指すことになり、根拠のない極端な主張はしにくくなって、常識的なところで話し合えることが期待できます。また、各当事者が法的な視点から意見を述べることで、遺産の評価、寄与分、特別受益、等、主張が整理され争点が明確になっていくことが期待できます。
4, 成立へ向けて
第1回の期日では各人の主張の整理が行われるのが一般的ですが、回を重ねるうちに具体的な案が出てきて、それに沿って協議がなされていくことが多いです。どの相続人がどの遺産を取得するか、ということの他、寄与分、特別受益の有無や内容、遺産である不動産の評価、などが議題となることが多いです。また、遺産の使い込み、遺産である不動産の管理や収益、など、相続そのものではない関連事項についても話し合いの対象となりえます。調停は審判と異なり、扱う範囲については、あまり厳密に区別されていません。それらの議題について、期日で話し合うのはもちろん、期日間に書面を出して主張することもあります。
全員が合意できれば、全員で一緒に調停室に入り、裁判官が条項案を読み上げて、異議が出なければ成立とする方法が一般的です。なお、第1回期日で成立することはほとんどなく、数回程度の期日を重ねてから成立に至ることが一般的です。
5, 遺産分割調停成立の効果
遺産分割調停が成立すれば、調停調書が作成されます。そこに記載された内容は法的拘束力を持ちます。調書に基づいて不動産の登記や銀行預貯金の名義変更などを行うことができます。代償金の支払いについても、調停調書を基に強制執行をすることができます。
6, 不成立の場合
遺産分割調停が不成立で終わった場合は自動的に審判に移行します。なお、何回程度で不成立になるかは、ケースによりますが、調停委員会が成立の見込みがないと判断したら調停は打ち切られ、審判移行になると考えられます。逆に、回数がかなり多くなっても、調停委員会がまだ成立の見込みがあると判断したら、調停は続けられるので、かなりの回数(10回以上)を重ねる場合もあります。
7, 遺産分割調停の限界
遺産分割調停は上記3で述べたように裁判所の手続きであるが故のメリットがあります。しかし、同時に、話し合いであるので、合意を形成できるとは限らず、そして、全相続人の合意がないと成立しないので、対立が解けなければ、結局、解決に至らないまま終了となってしまうという点が欠点と言えるでしょう。
もっとも、終了となると自動的に移行し、審判においては裁判所が結論を出しますが、結果、今度は審判という形で、当事者が必ずしも納得していない内容での分割がされてしまう恐れもあります。
そういう意味では、調停も審判もそれぞれメリット、デメリットがあります。とはいえ、通常は、まず調停を申し立て、不成立になった場合は審判に移行するという流れであり、最初から審判を申し立てるケースはまれです。最初から審判を申し立てても調停に付されことが一般的だと考えられています。
8, 遺産分割調停は弁護士にご依頼を
遺産分割調停について弁護士に依頼すると、弁護士が代理人としてご依頼者様と共に調停に出席します。また、調停の待ち時間(他の相続人が調停室に呼ばれている間)にも待合室等でご相談に応じ、また、次に呼ばれたときの対応について打ち合わせをすることができます。そして、書面の提出が必要な時、弁護士が専門的見地から作成し、裁判所に提出することができます。
このように、遺産分割調停において弁護士が行える業務はご依頼様のサポートであり、また、専門的知識を活かした主張であり、また、必要に応じて期日間に相談に応じたり打ち合わせをしたりすることもできます。すなわち、ご本人様が自らの権利を的確に主張して、また、他の相続人からの不当な請求に屈しないために、調停の様々な場面で弁護士は力を発揮します。
話し合いだから自分でもできる、という方もおられるかもしれませんが、専門的知識をもって主張を組み立て、また、相手方の主張に対抗していかないと不利になりかねません。それゆえ、遺産分割調停を申し立てたい方、また、他の相続人により申し立てられて対応が必要という方は、ぜひ、弁護士にご相談ください。
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