著作権と特許権の違い
著作権も特許権も知的財産法上の権利であることに違いはありません。しかし、この二つはかなり性質が異なります。以下、主な違いを見ていこうと思います。
1、権利の発生
著作権は創作により発生します。特に登録などの方式を必要とせず、創作により権利が発生します。一方、特許権は登録しないと発生しません。そして、特許は出願しても、登録が認められるとは限りません。特許の登録には、新規性と進歩性が必要とされています。仮に新規性がある発明でも当業者(同業者という意味)が従来の発明から容易に想到できたであろう発明は進歩性がないとされて登録は認められません。
これに対して、著作権は創作性があれば発生するとされており、また、高度な創作性は必要ないと考えられています。よく言われる話として、「幼稚園児が描いた絵」でも著作権は発生すると考えられています。ただ、ありふれた表現、選択の幅がない表現、については著作権は発生しないと解されており、短い文章や定型的な表現などが著作権の発生を争われる場合があります(例えば、休刊のあいさつや、交通標語について、著作権が発生するかどうか争われた事例があります)。
2、相続期間
著作権の存続期間は現行法だと原則として作者の死後70年ですが(団体名義で公表する場合は、公表後70年)、特許権は出願の日から20年です(ごく例外的に延長制度あり)。特許権の保護期間は著作権と比べるとかなり短いですが、特許は技術を保護しているので、あまり長くしすぎると産業の発展を妨げる恐れがあるからだと考えられています。
3、保護の対象
著作権が保護するのは表現です。アイデアそのものは保護されません。一方、特許権は「発明」を保護します。ここで、「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」(特許法2条1項)とされています。そういう意味では、特許は「アイデアを保護している」と言えるでしょう。
4、侵害となる行為
著作権侵害となるのはどのような行為であるかは、著作権法に列記されています。複製、翻案、公衆送信、演奏、上演、など著作物の性質により異なるものもありますが、著作権法に示された具体的な行為を許可なく行うことが侵害となります(ただ、「権利制限」といって著作権者の権利が制限されている場合もあり、その範囲内では許可を得ずに利用を行うこともできます。権利制限には「私的複製」や「引用」が有名ですが,他にもいろいろあります。ただし、アメリカ法の「フェア・ユース」の規定は日本の著作権法にはありません)。
一方、特許侵害となるのは無断での「業としての」実施であり、実施とは、物の発明であれば「生産、使用、譲渡等」(特許法2条3項1号)、方法の発明の場合は、「その方法の使用をする行為」(同2号)、などと定められています。
このように、侵害に当たる行為にも大きな違いがあります。
5、まとめ
このように、著作権と特許権は、発生、存続期間、保護対象、侵害となる行為、など様々な点で違いがあります。ただ、いずれも目に見えない権利を保護するものであり、無体財産権とか知的財産権とか呼ばれています。
ここでは代表的なものとして著作権と特許権を取り上げましたが、知的財産権としては、ほかに、意匠権、商標権、実用新案権、などがあり、それぞれ保護対象や存続期間などに違いがあります。また、不正競争防止法も知的財産権を保護しているという側面があるといえるでしょう。