著作権法における複製と翻案の違い
著作権法においては、複製と翻案は分けて規定されています。これらは、いずれも元の著作物を利用して別の物を作成する行為であり、いずれも原則として著作権者に無断で行うことが禁じられていますが、複製については21条で「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する」として定められている(複製権)のに対して、翻案については27条に「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。」という形で定められています(翻案権)。では、この2類型はどう違うのでしょうか?
これは、一般に、新たな物を作成する行為に創作性が認められるかどうかによると解されています。すなわち、元の著作物に何らかの創作性を加えて新しい著作物を作成すれば、翻案となり、創作性がなければ複製となります。いずれの場合も、元の著作物に依拠していることが前提になりますが、新たな創作の有無が問題になるわけです。
すなわち、もともとあるものをそのままコピーする場合は複製ですが、それに限らず、創作性のない改変がされても複製であり、一方、もともとの著作物に創作性のある改変を行えば、翻案ということになります。
翻案の場合は、新しい著作物は二次著作物となり、二次著作物を創作した者にも権利が発生します。ただし、原著作物の権利者も同等の権利を持ちます(28条)。すなわち、28条は、「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。」と定めているのです。また、二次著作物の創作者に権利が発生するからといって、無断で翻案したことが合法になるわけではありません。翻案についても、例外的な場合を除いて、著作権者の許可が必要です。
ところで、私的複製の例外についてはよく知られていますが、翻案の場合も私的利用の例外は適用されます。すなわち、30条1項が私的複製について定めており、翻案についても47条の6第1項が準用しているからです。このように、例外的に権利者の同意を得ずにできる規定のことを「権利制限規定」といいます。これは、著作権者の権利を制限する規定という意味です。著作権法は、著作権者の権利を守るための法律なので、著作権者の側からみて権利を行使できるか、それとも制限できるか、という見方をするため、著作権者の権利が制限されていて行使できない結果著作権者以外が許可なく利用できる場合に権利制限規定という言い方をするわけです。
なお、私的利用の例外はよく聞くと思いますが、様々な要件を満たさないと適用されず、誤った解釈で利用していると民事、場合によっては刑事の責任を問われる恐れがあるので、注意が必要です。複製であれ、翻案であれ、原則は著作権者の許可が必要であり、例外事由に当てはまるかどうかは丁寧な検討が必要です。