著作権法コラム・・私的利用が認められる範囲について

著作権について、無断でコピーをしてはいけない(複製権)ということと、その例外として私的利用というものがあることは、比較的知られているようです。ここで、私的利用とは著作権法30条に定められた利用方法のことであり、これに該当すれば、許可を得ずに複製をしても複製権(法21条)を侵害しないことになります。例えば、自分が購入した音楽CDをパソコンに取り込んでウォークマンにうつして聞く場合、CDからパソコン、パソコンからウォークマンに複製がされています。一見すると複製権を侵害しているように見えますが、しかし、あくまで自分で聞くためなら私的利用として適法になるわけです。
あるいは、昔のカセットテープが擦り切れてしまって聞けなくなる前に何らかの方法でパソコンに取り込んで保存したり、新しいテープにダビングすることも、自分で聞くためであれば私的利用として複製権を侵害しないことになります。
テレビ番組を後で自分や家族で見るために家庭用ビデオデッキで録画することもこれに当たります。
では、会社で会議に使うために本のうち図表が出ている1ページか2ページをコピーして配ることはどうでしょうか? あるいは、インターネットからデータをダウンロードして印刷して会議で配ることはどうでしょうか?
これは、30条の条文に照らすと私的利用には含まれないことがわかります。
法30条は「著作権の目的となっている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。」としており、「個人的」であるか、「家庭内その他これに準ずる限られた範囲」において使用することを目的としていることを求めています。そうすると、仕事での使用は個人的とは言えないですし、企業を家庭に準ずるというのは無理があるので、コピーして会議で配るような使い方は私的利用とは言えないと考えられます。
私的利用かどうかは、対価の有無で決まるわけではなく、「個人的」または「家庭内その他これに準ずる限られた範囲」において使用するものであることがまず条件になります。
なお、その範囲でも使用を目的とする場合でも私的利用と認められない場合について、30条1項1号から4号までに定められています。

以上のように、私的利用の規定は企業における利用には適用されないということを念頭に、社内での著作物の利用について考える必要があります。

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