【コラム】「遺留分減殺(侵害額)請求」はできる期間が短いので要注意!
遺留分減殺請求(旧法。改正法では、「遺留分侵害額請求」)という仕組みがあります。遺留分というのは、各相続人(兄弟姉妹やそれに由来する代襲相続人を除く)に認められた固有の相続分で、贈与、遺贈、遺言で侵された場合には、回復するように請求することができます。その、回復のための請求を遺留分減殺請求(改正法では、「遺留分侵害額請求」)と言います。
この対象になるのは、贈与については、相続前1年の分に限る(民法1030条前段)とされていますが、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、対象となる(同後段)とも定められています。
さらに、贈与を受けた者が共同相続人である場合は、原則として1年以上前の贈与も対象となるとするのが判例です。
(民法1044条、903条から導かれます) ただし、改正法では10年に限定されています。
そうすると、遺留分を侵害された者としては、回復請求(新法では「侵害額請求」)をすればよい、ということになるわけですが、しかし、実は、遺留分減殺請求には期間の制限があります。それも、かなり短期です。
まず、「減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する」とされています(民法1042条前段)。
つまり、1年で時効になってしまうわけです。では、どこから1年か、というと、相続の開始と遺留分が侵害されたことの両方を知った時から、ということになりますが、そうすると、案件によっては、被相続人の死亡から1年で時効になってしまう場合もあるわけです。
また、「相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする」(同後段)とされていて、これは、遺留分が侵害されたことを知らずに時が経過したとしても、被相続人の死亡から10年経つと請求できなくなる、ということを定めており、これは、除斥期間、と言います。
もちろん、除斥期間にかからなくても、時効にかかれば、請求できなくなります。
では、相続の開始と遺留分の侵害を知ってから1年以内に訴訟で請求する必要があるのでしょうか?
実のところ、内容証明郵便などでの意思表示でも問題ないとされています。
これは、遺留分減殺請求権が単独の意思表示によって効果が生じる、形成権、とされているからです。
それゆえ、1年以内に内容証明郵便を到達させるなどの方法で時効の完成を妨げておけばよく、時効までに訴訟手続きをする必要はないことになります。
このように、遺留分減殺請求(「遺留分侵害額請求」)には期限があり、特に、相続及び遺留分が侵害された事実を知ってから1年という短い期間で時効になってしまうため、減殺請求(「侵害額請求」)を考えている場合は、急ぐ必要があります。
なお、以前の、遺留分減殺請求の時は、行使することで個々の相続財産について遺留分の割合による共有になると解されていたため、その後の分割手続きが大変でした。その点、改正法における遺留分侵害額請求の場合は、侵害された分の金額を侵害した者に対して請求するという仕組みになり、金銭債権化されたため、手続き的な複雑さは解消されています。ただ、その金額の計算を巡って争われることは少なくないと考えられ、それなりに複雑な手続きではありますので、まずはご相談いただければ、と思います。