【コラム】相続人の中に行方不明の人がいる場合

相続人の中に行方不明の人がいる場合、遺産分割はどのようにすればよいでしょうか?
話し合いで決めようとすると、全員の一致が必要なので、一人行方不明の人がいると、解決できないようにも思えます。

しかし、法律上、方法がないわけではありません。

このような場合、2つの方法が考えられます。

一つは失踪宣告です。
これは7年以上行方不明の場合(戦争、船舶の沈没、など危難の場合には1年以上)に、利害関係人の申し立てにより、法律上死亡したとみなす制度で、家庭裁判所に申し立てます。
 これが認めれた場合、死亡したとみなされるわけですから、この方については、新たに相続が起きることになります。

一方、不在者財産管理人という制度があります。
これは、民法上は「従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったとき」および「本人の不在中に管理人の権限が消滅したとき」に選任されることになっています。(25条)

簡単に言えば、不在になり、連絡が取れないような場合に、財産を管理する人を選任するという仕組みであり、利害関係人または検察官が選任の申し立てを行なえます。それゆえ、共同相続人は申し立てることができることになります。

この仕組みは、失踪宣告と異なり、不在者の死亡したとみなすわけではなく、代わりに財産の管理をする人を選ぶ仕組みですので、要件を満たしていれば、比較的短い期間で決定されるのが一般的です。
不在者財産管理人は、裁判所の許可を得て(民法28条)、遺産分割協議に参加することができます。

但し、不在者財産管理人は、不在である本人のために財産を管理するわけですから(善管注意義務)、原則として、本人に不利な遺産分割に同意することはできません。それゆえ、不在者財産管理人制度を用いても、その関係では、柔軟な分割が難しいという問題は残ります。
ただ、話し合いができないという状態を脱することができるというメリットはあります。
上記の手続きは実際に行なおうとすると、それなりに複雑なので、専門家である弁護士に相談して頂ければ、と思います。

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