【コラム】遺言があっても揉めることがある?
遺言を書いておくと、揉めなくて済むと言われます。
ただ、実のところ、遺言を書いておいても、揉める場合もあります。
それゆえ、遺言を書くと揉めるリスクが下がる、というのが正しいと言えるでしょう。
では、遺言があっても揉めるのはどういうケースでしょうか?
まず、遺言そのものの有効性が争われる場合があります。
自筆証書遺言だと要件を欠く場合が挙げられます。これは、遺言が要式行為である以上、要式を欠くとされると、無効とされてしまいます。ただ、微妙な場合があり、多くの判例が積み重ねられてきています。
自筆証書だと、本当に本人が書いたのか、という点で争われることもあります。典型的には、「遺言で有利になる相続人やその家族が被相続人を装って書いた」という主張が他の相続人からされることがあるわけです。
このような場合、遺言無効確認訴訟という訴訟が起こされることがありますが、立証する責任は争う側にある(つまり、真偽不明だと請求棄却になる)とされています。
公正証書遺言だと、公証人がかかわるため、要件を欠くとされる事態は考えにくいですが、しかし、遺言者の遺言能力の点を争われることはあります。つまり、認知症などですでに遺言を出来る状態ではなかったので無効であるという主張がされることがあるわけです。
また、遺言が有効とされた場合でも、特定の相続人の遺留分を侵害する内容の遺言書が作成された場合、侵害された相続人から遺留分侵害額請求(旧遺留分減殺請求)がなされて、金額等を巡って揉める可能性があります。
このように、遺言をすれば確実に争いを防げるとまでは言えません。
ただ、そうはいっても、早いうち(元気なうち)に、公正証書遺言を作成しておけば、一般的に考えると、無効とされるリスクはかなり低いと考えられます。
それゆえ、やはり、遺言をすることには意味があると思います。