遺言・相続の流れ(遺言がない場合)
・遺産分割協議
遺言がない場合は、まず、相続人間で話し合って、遺産分割を行うのが一般的です。 これを遺産分割協議と言い、話し合いで合意に達すれば遺産分割協議書を作成します。協議は相続人が顔を合わせながら行うのが通常ですが、書面や持ち回りでもできます。もちろん、弁護士に依頼して、代理人として交渉してもらうこともできます。
協議は相続人全員の意思の合致によって成立します。つまり、多数決では成立しない点に注意が必要です。
相続人である者を無視した分割協議は、後日その者が相続人であることが判明すると無効になります。それゆえ、最初の段階で、だれが相続人であるかをしっかり調査する必要があります。具体的には、被相続人の戸籍を改正前原戸籍を含め出生から死亡まで取得し、他に相続人がいないかを確認します。
また、ここで遺産の一部が協議の対象とされないまま合意に至った場合は、後から見つかった遺産について協議をしなおさないといけなくなりますし、場合によっては、遺産分割協議全体が錯誤無効となるリスクもないとはいえません。それゆえ、遺産の範囲の調査も重要です。
それら(相続人調査、遺産の調査)は、弁護士に交渉をご依頼の場合は、基本的に弁護士が行います(ただ、中にはご本人様が行うほうがスムーズに進む部分もありますので、その点は協議させていただく形となります。例えば、戸籍の調査は弁護士が行うほうが慣れている分スムーズだと思いますが、預貯金の口座の開示はご本人様が金融機関に申請したほうが速いと思います)
こうして、遺産の範囲と相続人が確定したら、具体的な遺産分割の協議に入ります。合意に至れば、遺産分割協議書を作成して、不動産の登記の変更、銀行口座の解約や名義変更、など必要な手続きをして終了です。
・遺産分割調停・審判
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てるという方法があります。また、何らかの事情で話し合うことが難しい場合も、遺産分割調停や審判を申し立てることが考えられます。遺産分割協議が当事者だけで行うのに対し、家庭裁判所が関与するのが調停や審判の特徴です。
調停による分割申し立てを行う裁判所は相手方の住所地の家庭裁判所が管轄裁判所になります。 審判の場合は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てることになっています。 ただ、いきなり審判を申立てても、家庭裁判所の判断で調停に附されるのが一般的です。それゆえ、一般には、審判ではなく、調停を申立てます。
調停の申し立てには、申立の趣旨や申し立ての事実上などを記載した申立書、申立人・相手方の戸籍謄本、住民票、被相続人の戸籍謄本、改正原戸籍謄本、遺産目録、不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明、貯金・債権については現在高証明書、などが必要となります。ただし、事案に応じて必要書類は異なり、すべての案件で以上の書類が必要というわけではございません。また、書類の一部については、申立後に追加的に提出することで問題がない場合もあります。
また、 必要書類については、弁護士にご依頼の場合、基本的に、弁護士が集めることができます
*書類の一部については、ご本人様に集めていただく場合もございます。
調停では調停委員会のもと、話し合いが行われます。たいていは他の当事者とは同席せずに、調停室には各当事者が交代で入る形になります。ただ、成立の際など、全員の同席を求められる場合もあります。また、相続人が3名以上いる場合において、意見が一致する相続人どうしは同じグループとして扱われて同席する形で進められる場合もあります。
調停は、全員が合意すれば、成立します。調停が成立すれば、調書が作成され、それは強制力を持ちます。
*調停に代わる審判がされる場合もありますが、相続人の少なくとも一人が送達から2週間以内に異議を出せば効力は失われて、審判に移行します。
一方、調停で合意に至らなかった場合は、調停は打ち切られ、自動的に審判に移行します。(なお、調停の段階で調停に代わる審判が出されることもありますが、これは、2週間以内に異議が出れば効力が失われて、審判に移行します)
・高等裁判所での審理
もし、審判に対して不服を持つ当事者が審判結果の告知から2週間以内に即時抗告をすれば、高等裁判所で審理されることになります。ここでは、家裁の審判が適切であったかどうか、という観点から審理が行われます。
・最高裁判所
高裁の決定に対して特別抗告や許可抗告により最高裁判所の審理を求めることができる場合があります。これについては、許される期間が極めて短いので、要注意です。