遺言作成にかかる弁護士費用
遺言書作成を弁護士に依頼するといくらかかるでしょうか? 実は、それほど高くはなく、弁護士報酬としては、基本的に、10万円と税(税込11万円)で可能です(当事務所の標準)。もっとも、信託の設定を行う場合や、遺産が著しく多い場合で調査が必要な場合などにもう少しかかるケースもありますが、一般的には上記の値段で可能です。
ただ、これはあくまで遺言書作成のためにかかる弁護士費用であり、それ以外に、公証役場の費用がかかります。また、戸籍謄本の取り寄せなど書類収集の際に役所に払う費用が発生します。その他、2名の証人が必要ですが、これを弁護士に依頼すると1万円(税込1万1000円)かかります(当事務所の場合)。
また、弁護士ないし弁護士法人を遺言執行者とすると、相続発生後に遺言執行についての報酬が発生します。300万円以下の部分は、30万円(税込33万円)、300万円を超え3000万円以下の部分は2%(税込2.2%)、3000万円を超え3億円以下の部分は1%(税込1.1%)
3億円を超える部分は、0.5%(税込0.55%)というように、遺産額に応じた変動制となっています。これは、通常、遺産の中から頂く仕組みになります。
執行者について遺言書で定める場合は、その報酬についても遺言書に記載するのが一般的です。執行についての報酬は、通常、遺産の額に応じて決めます。
これは遺言執行者を定めた場合にだけ発生するものですので、遺言執行者を定めなければ、上記の、標準で10万円(税込11万円)と公証役場の費用などの実費だけが発生することとなります。
公証人にかかる費用は?
遺産の額や相続人の数によりますが、通常、数万円程度です。遺産を受け取る人ごとにその遺産額に応じて手数料を計算し、それを合計するという方法を採るので、遺産額だけではなく相続や遺贈を受ける人の数にもよって変わってきます。
金額の算定のために、遺産に不動産を含む場合は、固定資産評価証明書の取得が必要となります。
遺言執行者とは?
上記のように、弁護士ないし弁護士法人に遺言執行者を依頼すると、別途費用が掛かります。では、遺言執行者とはどういう役割を担う人なのでしょうか?
遺言執行者は、民法1012条1項にその権利と義務について定められています。すなわち、「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」とされており、具体的には、不動産の登記、銀行口座の解約、株式の名義変更、等、相続に伴って必要な各種の名義変更、などを行います。なお、不動産を不法占拠している者がいた場合の明け渡し請求まで遺言執行者が行うべきかは議論があります(判例は原則消極)。
遺言執行者がいない場合、名義変更などの手続きは相続人自身が行う必要があります。遺言の内容によっては登記や名義変更に手間がかかる場合があるので、遺言執行者を選任する意味があると言えます。
弁護士を遺言執行者にすべきか?
弁護士又は弁護士法人を遺言執行者として指定することには、メリットがあります。すなわち、複雑な遺言の内容の場合も法的に適切な執行ができますし、ご自身に専門的な知識がなくても弁護士に任せておくことができます。
しかし、遺言書(案)作成を依頼した弁護士ないし弁護士法人に遺言執行者を依頼することには、費用がかかること、以外にも、場合によってはデメリットがあります。すなわち、遺言執行者はすべての相続人に対して中立の立場で業務を行わないといけないため、特定の相続人のために代理人となることはできないと解されています。例えば、遺留分侵害額請求を起こされた場合でも、その相続人のために代理人となって交渉や訴訟に対応することは許されないと考えられます。(遺言執行後ならよいのではないかという議論もありますが、不可という見解も有力です) そこで、もし、遺言書(案)作成を依頼した弁護士に相続後のトラブルについても依頼したいのであれば、少なくともその弁護士を遺言執行者として指定しない方が良いということになります。
なお、遺言執行者については、遺言書で指定されていない場合、実際に相続が起きてから家庭裁判所に選任申立てを行うこともできるので、迷ったらとりあえず指定しないという考え方もあるでしょう。もっとも、相続発生後に専門家を候補者として遺言執行者の指定を申立てた場合、結局、報酬は発生することとなります。
遺言執行者を指定するかどうかは、報酬が発生するかどうか、ということよりも、遺言執行者を選任することが必要かどうか、という観点から考えると良いでしょう。
まずはご相談を
遺言書の書き方については、迷うことが多いと思います。また、内容次第ではご自身で考えていた結果につながらず、また、思いもかけない問題が生じる場合もあります。遺言書を書きたいと思ったら、法律の専門家である弁護士にご相談ください。当事務所の場合は、相談だけであれば、初回1時間無料です。ご依頼の場合に発生する弁護士報酬についても、その際には必ずご説明し、委任契約書にも記載させて頂きます。