遺言執行者とは

遺言執行者とは、遺言の内容を実行する人のことを指します。民法にその役割が規定されており、遺言の内容を実行するための各種の手続きを行い、相続財産の目録作成や残された財産の処理(預金の解約手続き、不動産登記の名義変更など)を行う一切の権限を持っている者とされています(民法1012条参照)。

そのため、遺言書において遺言執行者の定めをしておくと、実際の分割の手続きを遺言執行者が行なうため、相続人の事務的な負担は軽くなります。

 

遺言執行者の定め方

遺言の執行者の定めた方は以下3通りとされています。

  1. 家庭裁判所に遺言執行者を定めるための申立を行う。
  2. 遺言書で遺言執行者を定めておく。
  3. 遺言書で遺言執行者を定めるものを指名しておく。

基本的には未成年者や破産者(復権を得ていない場合)に関しては遺言執行者になることができませんが、そのほかの方であればだれでも遺言の執行者となることは可能です。

もちろん、相続人の方でも可能です。

しかし、遺言執行者という役割は専門的な法律の知識を必要とすることもあり、遺言の実行が難航することもあるでしょう。そのため、遺言の実行には法律の知識がある専門家を選任することも選択肢に入れていただくとよいのではないでしょうか。遺言書の作成を依頼している弁護士がいる場合は、遺言執行者についても依頼することをお勧めします。(依頼している弁護士の事務所が「弁護士法人」の場合は、当該弁護士法人を遺言執行者とするのが一般的です)

 

遺言執行者を定めることの具体的なメリット

上記で述べたように、一切の手続きを行う立場にある、遺言執行者ですが、定めることでの具体的なメリットを見ていきましょう。

 

① 遺言執行者以外の相続人は遺言書に残されている相続財産の処分や遺言書の実行を妨害する行為ができなくなる。

遺言執行者が定められていれば、法律上、こうした行為が禁止され、無断で行われた行為は無効となります。

 

② 第三者の遺言執行者であることによって、トラブルを防ぐことができる。

遺言執行者は相続人からも定めることができますが、弁護士や司法書士など第三者を定めることで、相続人間でのトラブルを防ぐことは可能です。

遺言に相続人同士で利益がぶつかる遺言の実行には相続人全員の協力を得ることができないケースがどうしても出てきてしまいます。その点、遺言執行者が第三者に定められていれば、利害関係を持たない客観的な立場の人物として、遺言書を忠実に実行することができます。

 

③ 預金の解約や不動産の名義変更をスムーズに行うことができる。

遺言執行者は、執行者がいない場合に相続人全員の印鑑証明や署名捺印が都度、必要となる各種手続きを、それらを必要とせずに一括して行うことができます。

 

遺言執行者が定められていない場合

遺言執行者が定められていない場合は、相続人で遺言の内容を実行する手続きを行ってもらうこととなります。しかし、相続手続きに関しては、初めてのことも多く、相続人が内容を実行するのは難しいケースもあるでしょう。

戸籍の取得等もあり、手続き自体も、複雑でわかりにくい部分も多いのではないかと感じます。さらに、遺言執行者を定めていなければ、各種手続きにおいて、相続人全員の意思を示すため署名、押印、印鑑証明が必要になる手続きもあり、時間がかかってしまうことも考えられます。

その点、遺言で遺言執行者を定めておくことで、手間のかかる遺産分割手続きをスムーズに行なうことが期待できます。なお、遺言で定められていない場合でも、相続人が家庭裁判所に選任申し立てを行なうということは可能です。それゆえ、執行者が定められていない遺言書が出てきて困っている、という場合にも、ご相談ください。

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